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04/01/2006

「ヒストリー・オブ・バイオレンス」を見た!

 久しぶりのクローネンバーグ作品。ちょっと前の「イグジスタンス」以来である。この前作も、アイディアからして突拍子もなく、不気味なゲームにとりつかれた人々の話なのだが、キャストが豪華(ジュード・ロウ、ジュリアン・ムーア)であったため見に行った。そしてその前は「クラッシュ」。偶然今話題の作品と同名だが全然別作品。今の方の題名を見た時、すぐにクロネンバーグ作品を思い出し、ははは、と思ったのは私だけではないでしょう。なにしろ、アイディアが突拍子もないので。しかし、過去のクローネンバーグ作品に比べると前2作は、私は少し変わってきたなぁという印象だった。ドラマ性が高くなってきている、というか。昔はやぱりホラーミステリーの代表者みたいな感じで、不気味な描写・SFXに特殊メークと突拍子もないストーリー、そして愛という感じだったが、前2作はドラマの中で特殊世界を描こうとしている手法に変わっていたように思う。それでも十分不気味さはあったけど、もちろん。

Wpa1024_768_1   で、「ヒストリー・オブ・バイオレンス」。おだやかな顔のヴィゴ・モーテセンがよい。昔は悪人面という印象だったこの人は一作毎に穏やかな顔になっていく。そして、今作のキャスティングはベストだったと思える。彼だからこそ穏やかで、でもなんとなく瞳の奥に秘密の輝きがあるようなキャラクターを表現できたのだろう。まあ正直、題名は本筋とちょっと違うように思うが。ストーリーは思いのほかシンプルだった。やさしくて、穏やかな父であり夫であるトム、実は別の顔をもつ過去があった、というお話。徐々に夫の過去に疑問を持ち、確信に変わり驚愕する妻と息子。家族は一体どうなるのか?そしてトムはどうするか? 驚いたのは、本当にクローネンバーグ?というくらい穏やかな語り口。本当に撮り方変わったんだなぁと思った。おだやかで仲良しの家族ということを強調するかのような、ファーストシーン。そしてなにより暴力や争いを嫌い、負けるが勝ちという強い姿勢を貫ける息子。それらをきちんと描くことで、いかにトムが良い父親かということが理解できる。しかし、バイオレンス描写はさすがで、頭が打たれるとか、血が飛び散るとかの描写にはきっちりディテールまで凝って撮っている。ぎゃっ!っと内心叫びつつ、さすが健在、などと思ったりして。他人になったつもりで過去を捨てて生きてきたが、生まれ変わった自分の中にやはり過去の自分は生きていた・・という事実。その後、あの家族はどうなるのか。穏やかで疲れた目をしたトム、苦悩と恐怖と愛の狭間で苦しむ妻。修復には時間がかかるだろうが、また静かにこの家族は暮らしていくだろうと思わせるラストシーン。しかし元通り愛せるのか、信じあえるのか。暴力とは行為そのもの事でなく、人の心の中に存在するものであり、コントロールするのはとても難しいものなのだと、言っているようだった。ヴィゴ本人の演じ方か、クロネンバーグの演出か、とにかくトムという人が過去の自分に戻ったシーンでも狂気に転じるわけではなく、同じ顔で演じていたのが逆に印象的だった。エド・ハリス、ウィリアム・ハートなど強烈な個性を残す豪華キャストがすごく効果的。誰にでも奨められるわけではなかったクローネンバーグ作品のこれまでのベスト作品だと私は思う。これは、普通にお奨めできる(^_^;)。

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Comments

Sis.Cさん、はじめまして。
TB&コメントありがとうございました。
クローネンバーグ映画をちゃんと観たのははいめてですが、(頭グチャ意外)ちょっとイメージと違っていました。
この辺りはSis.Cさんのおっしゃるように、シンプルながら独特のクセのある演出で印象的でした。
その後、あの家族がどのようになるか、再生するかが気になりますね。

Posted by: あ~る | 04/02/2006 at 10:51 AM

ドモドモー♪
先日は、TB、コメントをありがとうございました。

確かに過去のクローネンバーグ作品とは少し風合いが違いますね。
冒頭のモーテルでのシーンは、乾いた不穏なタッチで、あのまま続いて行くのかと思ったらあそこだけでしたしね。
それにしても、この作品はかなりツボに来ました。
>トムという人が過去の自分に戻ったシーンでも狂気に転じるわけではなく、同じ顔で演じていたのが逆に印象的だった
ワタシも同じことを思いました!!
あの演出はさらにこの映画を恐ろしくしていますね。

Posted by: Puff | 04/02/2006 at 11:35 AM

あ~るさん、ありがとうございます。
普通っぽいドラマなんですけど、どこか裏がありそうな演出だった・・というのは勘ぐりすぎかな?でもこれが初のクローネンバーグ作品ならば見やすかったと思います。

Puff さん、ありがとうございます。
静かな狂気って感じですよね。普通すぎる演出がなんというか反って鋭いというかリアリティというか。とにかく今までと違う手法がとても良かったと思いました。

Posted by: Sis.C | 04/02/2006 at 11:48 PM

こんにちは。
とてもおもしろく味わい深かったです。

>暴力とは行為そのもの事でなく、人の心の中に存在するもの

なるほど。いい得てますね♪

Posted by: かえる | 04/07/2006 at 12:13 PM

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