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05/29/2006

戦場のアリア を見た!

324253view007  舞台は第一次世界大戦時、フランス・スコットランド連合軍とドイツ軍はフランス北部の村で軍事境界線「ノーマンズランド」でにらみ合う。そしてクリスマス、家へ帰りたくても帰れない前線の兵士達も、夜ささやかにクリスマスを祝う。スコットランド軍塹壕から流れるバグパイプの音色にあわせ、ドイツ軍兵士であるテノール歌手が歌い始める。遂には互いの塹壕を出て歩みより始め、それを聞いていたフランス兵も顔を出す・・・。前線の兵士達同士でクリスマスの休戦を決め、3カ国の兵士達が交流を暖めたという実話の映画化だそうだ。 「クリスマス・イブだし、今晩は休戦ということでどうか?」それならば・・とフランス軍から差し出すワインでそれぞれの責任者達が穏やかに乾杯。それを見た部下の兵士達が思い思いに交流を深め始める。寒くつらい前線にて家に妻や子供を残して来ているのは、国が違えど皆同じ境遇。離れた距離から撃ち合えば互いに敵でしかないが、一緒に酒を飲み話をすれば、同じような境遇の人間同士になる。スコットランド軍に従事している司祭によるミサ、そして夫と離れたくない一心で前線に慰問に来たソプラノ歌手が、ミサのために賛美するアリア。その場の全ての人の心を平安で満たす、すばらしい夜。

  国の大儀と個人の心はどうして同じにならないのだろう。軍人である彼らは、国の大儀のため命令を守らなくてはならないが、目の前で親交を深めてしまった他国の兵士を『敵』というものには見れなくなる。一緒にカードゲームやサッカーを楽しみ、酒を飲み、お互いの家族の話をする。その後直接銃を構えることなどできない。それが人間なのだ。兄と一緒に戦争に加わったスコットランド兵士は、目の前で兄が死んだため、その悲しみと憎しみ故、他の兵士と同じ感情を抱くことは出来ず、彼には敵は敵であった。人が人を許すことはなんと難しいことか。時代は変わり、戦争の方法が変わってしまった今であっても、やはり前線にいる兵士と司令部にいる上官(または政治家や大統領!)では直接的に感じる痛みは大きく違うだろう。『国』という顔のない姿ではなく、そこに息づく一人ひとりのことを思いながらそれぞれの国のことを考えるべき。そうすればお互いもっと近づけるし、理解する努力ができるのではないか・・・と痛感した。 324253view009_1

 第一次大戦だからまだヒットラーは出現しておらず、ナチスではないドイツ軍もとても人間らしい。もともと芸術を愛する国民なのだから心はやさしく豊かなのだ。自分はユダヤ教徒だが昨夜は素晴らしかったと、さらっと話したドイツ軍中尉。もし彼がその後も無事に生きていたら、恐ろしい迫害に会うということが示唆されていたのだろうか、それとも偶然か。それを思って胸が痛んだ。三国の中尉達が話し合おうと集まるとき、必ずすぐにワインやコーヒーを差し出すのがフランス。なんとなくお国柄が表現されていたようで、ニッコリしてしまった。

  ノーマンズランドから基地へ戻ってきた兵に説教をするスコットランドの司教。あの夜すばらしいミサを行った司祭に「お前は間違った道を進んだ」と言い放ち、この戦争が聖戦であり祝福された自分達が悪を倒すと話した。なんて悲しく恐ろしいシーン。信仰のかけらも愛もそこには無く、傲慢な思い上がりが神の名をかたっている。なんて人間は愚かなんだろう。 しかし一方で、たとえハーモニカを壊されてしまっても、自分達でハーモニーを作り上げることで、音楽を続けることができる!と元気を出すドイツ兵達のように、仲間がいれば強くなれる、そんな部分も人間は持ち合わせている、とこの作品は教えてくれた。

今が旬のダニエル・ブリュールと、「世界で一番不幸で幸せな私」で好きになった、美形印のギョーム・カネがそれぞれドイツとフランスの中尉役。この共演だけでも見れて良かった~。

こんなに素晴らしいお話なのだけど、ただのお話として片付いてしまうのがとても残念。戦争中に敵軍の兵士と心を通わせる、とか、サッカーで交流とかそういう実話は多くあるはず。それなのにその美しい話だけが後に語られ、だからって戦争は無くならない。日本人の選択肢に戦争はまず無い。軍隊がないからだ、という事もあると思うが。そんなものいらない。無くて結構だと思ってしまう。こういうお話を見ると、なおさら強く思う。

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Comments

こんばんは。
三国の兵士達から戦うことの意味を奪い去った、ミサのシーン、そしてアナの独唱。震えました。確かに、この奇跡も戦争を終わらせいないし、今もって復讐は復讐を呼び、世の中から悲惨な戦争もなくならない。それは人間の絶望的な醜さかもしれないけれど、それでも、共に感動し、共に笑うことができることを忘れなければ、いつの日か芸術や音楽が人間に戦争をやめさせるのではないかと、希望を持たせてくれる映画でした。

Posted by: あしあと | 06/02/2006 at 01:55 AM

あしあとさん、こんばんは。
ありがとうございます。
音楽や芸術は人間にとって必要なものですよね。共通の言語と言っていい。言葉や立場の垣根を超えて人の心を結びつける鍵、きっかけとなるものだと私も思います。本当に、希望を失いたくない、いつか世界中が一緒に笑いあえる日が来ることを信じたいですね。

Posted by: Sis.C | 06/02/2006 at 02:02 AM

はじめまして。
TBありがとうございました。
戦争は国家間で行われるものですが、
戦って犠牲になるのはいつも国民であり、国民は
戦う事なんて望んでいない。
ノーマンズランドで敵兵と友情を分かち合った人達が
上官や司祭から痛烈に批判される場面は胸が痛く
なりました。

Posted by: えめきん | 06/04/2006 at 07:34 AM

えめきんさん、ありがとうございます。
そうですねー、政治家の都合で戦争が始まっている、としか思えませんよね。もちろんそれだけではないのだろうけれど。
意見や利害の食い違った国同士で、戦争という選択肢が無くなり、隣人を愛せ・・で解決していける世の中になって欲しいと思います。

Posted by: Sis.C | 06/04/2006 at 02:52 PM

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