« October 2006 | Main | December 2006 »

11/20/2006

「サンキュー・スモーキング」を見た!

ディベートって?Img_nick_1

アメリカは自由の国、という言葉がその象徴として使われているが、好き勝手自己主張していいさ、だって自由の国だから・・という使われ方をしているように思える時が多い。だから、それぞれ思惑の違い・利害関係・価値観の違いでしばしば社会において摩擦が起こる状況は日常茶飯事、日本よりも断然多いのではないだろうか。だからこそ、アメリカにはディベートというもの(習慣の一つというべきか?)が存在する。

物を知らない私はディベートについて初めて知ったのは、社会人になって何年も経過してからだった。バブル崩壊後のショックから立ち直りつつあった日本経済は、ちょうど外資系企業がヒタヒタと黒船のようにやって来た頃だろうか。アメリカ式経営やらMBAを日本企業にどう生かすか?みたいな文字が雑誌に躍りまくっていた頃、ディベートの本をちょこちょこ見かけるようになり、立ち読みしたのが初めてだった。議論てこと?んー、議論することだけど、いかに上手く議論をして負けないかってことらしい・・、職場の先輩にそんな話をしたら、「あんたいつもやってる事だよ」と言われた。なにを~!その時は先輩がいつも私に口では叶わない風であったため、人聞きが悪い、などと思ったが、ディベートについて少しずつ理解を深めていくと、ビジネスパーソンがその能力に長けていたら、かなりプラスになるだろうな、と思うようになった。

いかにもアメリカらしい職業

Thank_you_smoking 前置きがやたら長くなったが、この映画はまさしくその才能を存分に発揮する男のお話である。自分が気分を害したら、不利益を被ったと思ったら、とにかく誰かを訴えてしまう国、アメリカでは企業が訴えられることもよくあるが、タバコ訴訟は大きなニュースになった。主人公はタバコ研究所所属のスポークスマン、つまりたばこ業界のセールスマーケティング担当、たばこの宣伝マンのような人。大統領にだっていわゆる広告担当がついている国。どんな物にもイメージ戦略は欠かせない。アピール方法一つで、国民の、視聴者の、感情は大きく左右され、もたれるイメージが変わる・・・それを操作する人、なのだ。人呼んで「情報操作の王」!

いかにして、すでにイメージが悪くなっているタバコ業界のため超人的な彼が奮闘するというお話?・・・なのかと思ったが、それもあるが、本質はちょと違っていて、むしろディベートの本質を描いているような話だった。彼はたまたま、たばこ業界のために働いている、なぜなら才能を発揮できるから。それは人を煙にまくような手法なのかな?と勝手に想像していたが、それもあるがそれだけではなく、意外にも彼はとても誠実で人間らしい人柄。そして彼の主張は理路整然としていて、観客は彼の説得力ある主張に感心し、これがディベートというものなのか、ということをわかりやすく見せてくれる。

ちょっといいエピソード・息子との関係

また彼の技術を、息子に生活の中で説いて見せるところもとても面白い。「これは議論ではない、交渉だ。」とか。テレビに出たりで有名だけど、なんだか人に誇れる仕事をしていないみたいに思われがちな父親・・結婚生活は上手くいかなかったけど、息子だけは大切にしたい、そんな父と子の関係もきちんと描かれていた。出張に息子を連れて行くシーンは、とても素敵だ。自分の仕事に誇りを持っていることがわかるし、息子に普段自分が教えていることを、実際に自分の目で確かめろ、と言っているかのようだった。親友が同様にアルコールと銃のスポークスマンだったり(3人でMODS特捜隊!)、ハリウッドやテレビのトークショーなどアメリカらしいエンターティメントの世界を見せるシーンも多く織り込まれていて、観客は飽きない。クライマックスシーンの公聴会での彼の主張が、とってもあたりまえで道徳的、だけどそれを堂々と公共の場で言ってのける人はいないよね、という内容で、何でも人のせいにして訴訟を起こす国、アメリカへ正々堂々と意見しているようだった。自分の行動や選択は自分が責任を持つべきなのだ!!プラス、最近の日本の社会にも、こういう傾向あるよね、と大きくうなづいたりして。他人を説得できる人は、口先や建前だけではなく、きちんとした信条を持っているのだ、と言ってるようでとても爽快だった。

 期待以上の作品で、今の所、今年見た映画の中で上位3本に入るおもしろさ。知的辛口ヒューマンコメディとでも言おうか。大人向きの上質な一本である。

監督はコメディ作品の第一人者アイバン・ライトマンの息子、ジェイソン・ライトマン、これがデビュー作。今後がとても楽しみな監督である。主役のアーロン・エッカート、ケツあご(失礼!)で口も大きいけど瞳がバンビのようで憎めない人。そして息子役キャメロン・ブライト君は既に「X-men」等々活躍中、今後絶対に目が離せない男の子です。

| | Comments (6) | TrackBack (4)

« October 2006 | Main | December 2006 »